渓流釣り、秋の熊への対策

しばらくの間ブログをお休みしていましたがこれからまた再開させていただこうと思います。

いろいろと書き溜めてあるので少しづつですが更新したいと思いますので今後とも宜しくお願い致します。

今回のブログは熊についてなのですが、実は各地の渓流解禁前に書いていた記事がありましたが公開しておりませんでした。

ただ、今まさに季節は朝の冷え込みと共に秋を迎え、川も産卵のために戻って来る婚姻色に彩られた遡上魚が多く見られます。
熊はこれから冬眠に入る準備として食い溜めをする為、遡上魚を狙いに川に出没する事が多くなります。

何より今年は北海道での熊の出没が多数あり市街地にも出没しニュースでも取り上げられる状況です。

今回は私なりの対策も含め記事を改めて見直し秋の熊への対策として参考になればという意味も込めて公開させていただこうと思いました。
最後までお付き合いください。

渓流釣りを始めるにあたって父やハンターの叔父から言われた言葉があります。

「山に入って川釣りをするといういことは熊の生活域に自らの意思でお邪魔しに行くという事を自覚しなさい。そして魚が釣れることよりもまず第一に熊への対策をしっかりする事が必要なんだ。」と、釣りの事よりも「自然を知る」ことの重要性を学べと言われました。

例えばです。

熊に遭遇したとします。
熊に襲われたとします。
ここで命を落とすことになるのは襲われた人間だけではなく熊も命を落とすことになるのです。

それはなぜか。

人を襲った熊は人を「食料」と認識するようになります。
そうすると人を避けていたはずの熊は人を「食料」として好んで襲うようになっていきます。
熊は食料に対する執着心はとてつもないものです。
そして人と不意に出くわし人からなんらかの攻撃を受けたり、手負いになった熊については人を「敵」として認識して人を襲う事になります。

熊にとって人間の存在が「食料」や、「敵」という形で認識されてしまったならば熊を駆除しなければならないのです。

野生の本能でそう認識してしまえばもはや熊と人は会話も出来るわけでもないので執拗に人を襲ってしまう事になり、駆除をするしかなくなるのです。

「駆除」をするという事。
それは熊を「殺める」という事です。

熊(北海道においてはヒグマ)による食害事件を詳しく知りたいのであれば、「福岡大学ワンダーフォーゲル部の事件」や「三毛別羆事件」を参照にしていただけるとより理解ができるかと思います。

…ならば考えて対策できる人間に何かできることはないか?と、熊を殺さない為にも、人の命の為にもまず考えるべきです。

熊は知能が高いとはいえ野生動物です。

人は知能もあり対策を取ることができるし、そもそも熊の生活空間で人間が何かをしようと思うのであればこちらから対策しないとなりません。

私も一人釣行を始めた20年以上前は熊に何度も遭遇してしまいました。

その度に命あることに感謝し、何が足りなかったか自分の装備や対策を何度も考えました。
そもそもいろんな資料を見て女性が襲われやすいということも調べていたので女性として対策をするならば整髪料や化粧品について考え直すことを1番先に思いつきました。

釣りに行く時はシャンプーもできるだけ匂いのしないものを選んだり、化粧は日焼け止め程度に抑えたりします。

熊の嗅覚、聴覚は人間の何倍も優れています。
ゴミの中に食べ物の残りや袋があったとしたらそれに近づいて来るので絶対に山や川にゴミを捨てて帰ることはしてはいけません。

本来、熊は臆病で人を避けるので熊鈴はもちろん、ホイッスルや爆竹、タバコの煙で人の存在を知らせて渓流を歩くようにしています。
一人で大声で歌って歩くこともよくあります。

そして川を歩きながら熊独特の獣臭を感じないか確認したり、熊の痕跡を見つけたら周りを確認したり、あまりにも新しいフンがあった場合は即脱渓します。

熊の足跡。

先行者のいない川で石に上がった跡。

ただこれだけ考えていても万全ではないし絶対大丈夫ではありません。
こうやって対策をいろいろしていても熊を目撃する事がありました。

熊を遠目で見つけたときですらあまりの衝撃と恐怖で体が固まってしまい、熊スプレーの安全装置を外そうとする手も震えてしまいます。
なのですぐに対応できる可能性が高い熊なたを持ち歩いています。

よく「目撃した!!」と写真などに収めている方を見かけますが私にはそんな余裕は全くありません。

熊の体格とスピードを例えたテレビ番組を見たときに「マツコデラックスがウサインボルトの速さで走ってくる」というのを見たことがあります。
想像するだけで恐ろしいですよね。
あの巨大な体がその速さで走るなんて人がどうやっても太刀打ちする事は不可能です。

背をむけてしまうと襲われるので目をそらさぬように見つめ、その間に「今自分がすべき事」を第一に考えます。
脱渓地点を考えたり、冷静さを保つように自分自身を落ち着かせる事を優先的に考えます。

森のくまさんという歌の歌詞のようなおちゃらけた楽しい雰囲気など何一つありません。

スタコラサッサと逃げることなんてできるならどんなに楽でしょうか。

そんな中、対策が万全だと思っていたのにも関わらず熊に鉢合わせする形で出会ってしまった事がありました。
その瞬間自分のしていた対策が全て「無」の状態になりました。

その時、なぜ熊に遭遇してしまったのか今でも自分が反省するべき所なのでよく覚えています。

ついつい魚が釣れるポイントが多く釣りに夢中になり、ホイッスルを吹くことも声を出すこともせず、ただ淡々と釣りをしながら静かに川を歩いていってしまったのです。
風向きが変わり独特のにおいに気づき先を見ると熊がこちらをじっと見つめていました。
おそらく熊は先に気づいていて私の様子を伺っていたのでしょう。
そこからハッと我に返りにらみ合いになりました。
にらみ合いとは言いながらも私は猛烈に震え、自然と涙が頬を伝う状況でした。何故か必死に家族の顔を思い出して「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝り続けていました。
熊とのにらみ合いはほんの数分間だったのにも関わらず終りが見えない程の長い時間に感じられました。

熊の方が先に去ってくれたので事なきを得たのですがその後も変な汗をかき続け震えも止まりませんでした。
どうやって車にたどり着いたかさえ覚えていないほど動揺していました。

この出来事があってから、さらに文献を読んでみたり、ネットで調べたりより詳しく熊の生態について勉強しました。

本当はこんな出来事があったら釣りを辞めてしまうのが正しいのかもしれませんが、自分にできることをさらに考えるいい機会になり、その後も釣りを続けています。

最近はほとんど熊を目撃する事もありません。
対策のおかげか、幸運が続いているのかはわかりませんが油断は一切せずに変わらず対策については真剣に考えています。

野生動物や自然の撮影をされている方や登山を専門になさっている方は野生動物の生態や危険性をしっかり熟知されて活動をされています。そういう方の装備品や対策もとても勉強になります。

ただそういった仕事として専門的に自然と向き合う方々がしっかりと学んでいて対策を取られているならば、趣味として野生動物の領域に入っていく釣り人も正しい知識や対策を取るべきだと思います。

知床などで熊が頻繁に出没している事はネットのニュースなどでよく目にしますがその見物人と熊との距離に驚くことがあります。

熊は野生動物です。マスコットや見世物ではないのです。

熊と人は同じ領域において共存はできません。
熊の命も人の命も守りたいのであれば人として何かできることを考えたい。

私はそう思いながら釣りを続けていこうと思います。

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「魚を釣る楽しさを」という、原点回帰のロッド

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私がプロデュースさせて頂いた渓流ベイトフィネスロッドがTulalaから発売開始されております。

私の目指したところは「魚を釣る楽しさ」
小さな渓魚との出逢いにも笑顔になれて、ファイト時に思わず笑顔が溢れるような釣りを楽しめるロッドです。

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