ちょっと夏場に釣りをお休みしていたんですが、その理由は暑さ以外にも実はヒグマとの出来事がありました。
SNSでは写真がメインなので伝えきれなかったので投稿していなかったのでこのブログで今年の夏に何があったのか少しお話していこうと思います。
夏の日差しが強く快晴で気温が30度以上になる予報の日で釣りだけではなく景色も夏の渓流も楽しめるなぁとワクワクしながら一人で家をでました。
その日は選んだ川は何十年も行き慣れていて地形も脱渓場所も良くわかっている所。
いつも通りしっかりと自分なりのヒグマ対策をしてホイッスルを吹き周りを警戒しながら鈴を鳴らして川を歩きはじめました。
いつもより魚の反応も良く数が釣れるけどちょうど良い浅瀬がなく写真を撮る場所に困りどこかいい場所がないかなぁ?と写真を撮らずにそのまましばらく釣り上がる。
渓流に響く川のせせらぎの音。
夏の日差しと生い茂った草木の色が眩しく川にいるだけで癒される。
私は釣りも大好きだけどこの川時間が楽しくて大切にしています。
川時間を楽しみつつ釣り上がって行くと今日一番の綺麗な魚が釣れ浅瀬もありようやく写真も撮れるポイント。
やっと写真が撮れると喜びながらポケットからデジカメを取り出し撮影の準備をしてしゃがむとふと何か違和感と気配を対岸から感じる。
そっと顔を上げて目線を動かすと対岸奥の藪の一部が揺れている。
そしてそのナニカがこっちに近づいてくるのがわかる。
一瞬にして空間が歪むような感覚を感じた瞬間、吹いていたホイッスルが口から落ちて動悸がする。
「これはヒグマだ。」
頭の中ではすぐに理解出来たがまだ姿は見えず恐怖心だけが強まる。
同時に過去にヒグマと遭遇した時の記憶が鮮明に蘇り緊張感が走る。
こういう時はなぜか両親の顔や家を出るときに見送ってくれた旦那の心配そうな顔も頭によぎる。
「やってしまった・・・。これはまずい」
思考回路はパンク寸前。それでもまずは目線を逸らさず冷静にデジカメをポケットにしまい腰のクマスプレーに手を伸ばし安全装置を外す。そのままクマスプレーを構えて気配のする藪の方向を見つめてざっと目測で距離を読み取る。
対岸奥だいたい2、30メートルだろうか。
一気に距離を詰められてしまう近さだとなんともいえない絶望感が頭によぎる。
呼吸を整えようと深呼吸し対岸の藪をしっかりと見つめ現在地から1番近い脱渓ポイントを頭の中で整理する。
「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせて対岸奥の藪を見つめる。瞬きするタイミングも掴めない。
自分の呼吸が荒くなり息を吐くのがやっと。
もはや呼吸の仕方すら頭から吹っ飛んで今どうすべきかを精一杯考える。
睨み合いのような、私が思うナニカの姿をまだ確認は出来ていないが近づいてくる藪の動きに向け、クマスプレーに祈りを込めて構えじっと耐え続ける。
一分一秒が長すぎる。
ひたすらじっと手の震えを抑えながらクマスプレーを構え耐えているとまだ姿は見えないが近寄ってきていたナニカの藪の揺れが幸運にも私と逆方向の山側、対岸の奥へと戻っていく。
「頼む、頼むからそのまま奥に行ってくれ」
藪の動きを凝視しながら必死に祈る。
対岸奥の傾斜を黒っぽい焦茶の大型のナニカが軽やかに登っていく姿が見えた。
大きさからは考えられないような身軽さに目を奪われつつ改めて藪のナニカの揺れは勘違いや思い過ごしではなく明らかにヒグマだった。
「ナニカ」が「ヒグマ」という確信に変わると離れて行っているのにも関わらず更に恐怖心が強まる。
そのまましばらく斜面を見つめ遠ざかった事を確認し私は静かに踵を返し脱渓ポイントに向かいました。
時間にしてみるとそんなに長くはないはずなのに数時間こんな状態だったような感覚。
ヒグマに遭遇した時は大体こういう感覚になってしまう。
車に乗った瞬間に張り詰めた緊張感から解放されてどっと疲労感が出て大量の汗が噴き出る。
私自身遭遇経験は過去にも数回ある。そしてその経験から自分のできる限りの対策もしっかりしているつもりだった。
それなのにこういう状況に陥ってしまった。
今年はニアミスを含めるとまさに異常な状況で早朝や夕方ではなく昼間などの時間帯での遭遇、目撃が多い。
過去に「この川では遭遇した事はないから…」とかそんな事は言ってられない事態になって来ているとこの時痛感して川が怖くなってしまいました。
車での遭遇ならまだいいとして川での遭遇は本当に恐怖でしかありません。
そして今回唯一いままでの経験が生きた事といえばほんの僅かな異変に気付き対応が出来た事でバッタリ遭遇することを回避できたのだと思っています。
あのまま気にせず魚の撮影を続けていたら・・・
そう思うとゾッとします。
とにかくどんなに経験がある人だとしてもヒグマの個体数が増えている現在の北海道での釣りや登山、その他アウトドア関係ではヒグマの問題は切り離せないという事を常に頭の片隅に置いておく必要があると思うのです。
私自身毎回遭遇した時に思う事は「今回はたまたま運が良く助かったけど次も大丈夫という保証は絶対にない」という事。
私はヒグマの専門家でもなく研究者でもなくただの釣り人です。
もし私がヒグマによる事故で何かあったら他の人にも迷惑をかけてしまうし釣果よりも命が大事です。
臆病でダサいと思われても良い。是が非でも遭遇は避けたい。
怖いものは怖いし、釣りは命を懸ける趣味ではないから無理せず怖いと思ったら釣りをやめて川から上がるように心掛けています。
そして今回の私の遭遇ではクマスプレーがあったからこそ背後を見せずに冷静に対応できたと思っています。
あの時慌てふためいて対応を間違っていたのならばどうなっていたかと考えるだけで背筋が凍る思いです。
クマスプレーがあるとないとでは精神面でもかなり違いますし、100%ではないにしても助かる確率はきっと上がると信じています。
今回の遭遇した時の状況をヒグマについての経験値がとても高くお世話になっている方に相談し私の対処方法についてや今後の対策等をアドバイスをいただき私はどうにか釣りを再開することが出来ました。
あれ以来単独釣行の数は減り以前よりも注意しながら釣行を続けています。
この遭遇があったので少しの間釣行を控えていたのですが、落ち着いて釣行を再開してすぐに今度は違う河川で再び遭遇してしまうのです・・・。
それはまた秋の遭遇編ということで別に記事を書こうと思います。
何度もしつこく言います。
私は何十年も渓流釣りをしていますがこんなにも遭遇・目撃率が高いのは本当に初めてです。
ついつい釣りに夢中になり周りが見えなくなってしまう事もあると思いますが皆様どうか釣行の際にはお気をつけください。
私もより一層気をつけて釣行していきます。
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